東日本大震災、福島原発事故から10年。NHK記者から高知県知事に転身、ニュースキャスターを長く務めた橋本大二郎さんを迎えた集会が14日、札幌エルプラザで開かれました。橋本さんは原発や核のゴミの問題で縦横に語りました。集会では福島からの自主避難者や核のゴミで揺れる寿都町の住民からの報告もありました。

高知県知事4期16年の最終年の07年、徳島県境の東洋町が国内で初めて「核のゴミ」の文献調査に応募、橋本知事は資源エネルギー庁やNUMO(原子力発電環境整備機構)との対応に奔走しました。
橋本さんは「高レベル放射性廃棄物の最終処分場の誘致・交付は、受け入れやむなしの雰囲気を作らせるための工作資金。財政的に厳しい自治体の頬を札束でたたいて従わせる下品なやり方と感じた」と述壊。東洋町は出直し町長選挙でリコール派が大差で勝利、申請は取り下げられました。
今回の寿都町の動きについて橋本さんは「片岡町長が『誰かがやらなければと思って一石を投じる思いで応募した』との心意気は素晴らしいが、今や無用の長物の核燃料サイクル計画の核廃棄物処分に手を貸すことは国民につけを回すだけだ」と切って捨てました。
橋本さんは片岡町長が「概要調査、精密調査の段階で国が立ち止まることができるとの文書を交わしている」と述べたことに対して、「国の深謀遠慮にすぎない。国は反対する知事や首長が変われば推進できると考えており、文字通り『鳴かぬなら鳴くまで待とう』としたたかな態度だ。国は知事の交代を待つだけで、中止にも断念にも至らないことを覚悟しておく必要がある」と厳しく対峙すべきだと戒めました。
橋本さんは核燃料サイクル計画につぎ込まれた費用についても言及。「高速増殖炉もんじゅは16年に廃炉が決まったが、1兆円が費やされ、廃炉にも1500億円が見込まれる。
青森県六ヶ所村再処理工場は原発を使用している10の電力会社の出資で03年に着工されたが、完成予定は25年続けて延期されている。当初7600億円とされていた建設費は2兆9000億円と、3・8倍に膨れあがっている」と指摘。
「泊原発も使用する計画のMOX燃料によるプルサーマル発電も始まっている。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すことに経済性がないことは明らか。だが現在はこうした余分なコストを電気料金に上乗せすることが可能になり、消費者へのしわ寄せで、原発の稼働が可能になっている」と強調しました。
橋本さんは「多くの国民は安全面だけでなく、コスト面でも優位性のない原発に否定的だ。ムダな投資が明らかな核燃料サイクルの一環となる高レベル放射性廃棄物の最終処分場の整備に地域は手を貸すべきではない」とクギを刺しました。
「原発事故は収束していない」「住民投票条例はパフォーマンス」

3・14集会では、事故後、フクシマから自主避難した宍戸隆子さんが「10年目」を報告。「区切りではなく、残酷な10年だった。胸にガラスのカケラを抱いて生きている。今回の報道はカケラに触れる嫌な体験。原発という命を奪う施設を東電に任せてはいけない。何の決定権も持たない子どもたちが苦しみを味わった。皆さんは、私たちのことを自分事として考えてほしい。一緒に考えてゆきましょう」と呼びかけました。
「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」共同代表の三木信香さんは「住民投票条例が可決されたが、パフォーマンスでしかない。私たちの条例とは全く違う。町民の会の大半が初めての住民運動。手探りながら間をあけずにやってゆく。片岡町長や賛成議員には住民の声を聞く姿勢はない。娘は寿都が大好きで、見捨てないでくれてありがとうと言ってくれた。いつも背中を押してくれて頑張れる。皆さんのサポートで、核のゴミ撤回まで声をあげてゆきたい」と語りかけました。