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吉岡ひろ子のエッセイ「お元気ですか」

とうきび

月に一度、絵手紙の指導で介護施設に行っていますが、入居者の方たちに何を描いてもらおうかと思案するのも楽しみの一つです。

春からずっとお花が続いていたこともあり、今月は思い切って、描くのが難しい「とうきび」を選びました。

いつも鮮やかな色彩の絵を描くMさんが、描いたあととうきびを手にして「食べたいなあ」とつぶやいていました。

とうきびは、道産子にとって、夏から秋にかけての味覚のおおさまといっても言い過ぎではありません。

少女時代、子どもが2人の少人数の我が家でも、大鍋でゆでました。

もうもうと立ち上ったゆげの中の山盛りの黄色いとうきびが、私の目をどれだけ輝かせてくれただろうか――と思います。

故郷を思えば、そこには山があり川があり、家族がいて友がいて、美味しい思い出が蘇ります。

「美味しい思い出」を支えているのが、間違いなくお百姓さんであり漁師ですが、北海道の農家戸数は減り続けて約6万戸。TPPに参加したらさらに半分に激減するといわれています。

60キロのお米が5千円なんかで輸入されたら、もう日本の農家はたちうちできません。

残念なことに、絵手紙に描かれたとうきびはMさんの口には入らず、私がいただきました――。

収穫の秋に北海道の大地の恵みに感謝し、改めて「TPP参加反対!」を――。

(9月26日記)(隔週掲載・更新)

「清田区新聞」12年09月30日付より