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吉岡ひろ子のエッセイ「お元気ですか」

アレン・ネルソンさん

安倍首相がことあるごとに「美しい国」を言い、改憲手続き法成立を2カ月後にひかえた2年前の3月。わたしたちは元ベトナム戦争帰還兵、アレン・ネルソンさんの講演会にとりくみました。握手をしたアレンさんの手は温かくて柔らかでした。語りかける笑顔は包み込む優しさにあふれていましたがそこまでたどり着くには20年以上かかったことをしりました。

憲法九条が崖っぷちに追いやられている情況下で聞く「戦争」「戦場」は生々しく、しかもパックリと開いた地獄の割れ目は、じっとしていたらわたしたちの足もとにじりじりと忍び寄ってくる現実味がありました。

アレンさんはいま「多発性骨髄腫」「余命2カ月から6カ月」と診断されガンの治療を開始したばかり。病をかかえていたであろう昨秋の関西講演では、黒人大統領の誕生に万感の思いを吐露しつつも「公約が守られなければ私たちは批判活動を起こさなければなりません。誰が大統領になっても国民のたたかいなくして問題解決の前進はないのです。」と語りました。

1年の3分の1は日本で命と平和と憲法九条の尊さをつたえ続けたアレンさんの治療費を支える会がさっそく誕生しました。

(2月10日記)

「清田区新聞」09年02月15日付より